貴志真生也 いうこときかない
8/23 (Sat)-9/20 (Sat), 2025
Opening hours: 12:00-19:00 (Wed-Sat)
Closed on Sun, Mon, Tue and National Holidays
Reception: Saturday, August 23, 18:00-19:00
貴志は、木材や建築資材、ブルーシートや発泡スチロール、電光掲示板など、それ単体では意味をなさない素材を用い、立体やインスタレーションをはじめ多岐にわたる作品を制作している。それらの素材はあまり加工されることなく簡素に組み立てられており、我々は作家の意図やそこに描かれているものが何なのかを探ろうとするが、そのような詮索は無力に終わり、目の前にある作品そのもの自体が「何なのだろう?」とただ呆気に取られる。
制作の過程では、既存の事物や社会での事象を洞察し、あらゆることと対話をしながら素材の質感や状態、その組み立てに着目する。そして既成のモノゴトの構造を一度解体し、独自の理論とルールをもって組み立て直しを行う。貴志は新しい言語を作るかのごとくルールと構造を立ち上げていく。そうして現れてくる作品は、常に私たちが見たことのない形態をしており、“ただの素材と作品のあいだ”、“彫刻性が成り立つ境界線”を貴志は模索し続けているかのようである。
人間の思い通りにいかないことは常であり、制作においても、重力、素材の加工方法や素材同士の繋げ方など制約があり描いたとおりにならないことがある。貴志の作品は、静止する平面の中に動的な要素を取り入れたり、組み立て自体は分かりやすい構造体であるにもかかわらず表現されているものは捉えがたいこと、規則性と不規則性が一体になっていたり、感情的なイメージの中に突如無機質な物質の挿入があったりする。すなわち静止と運動、理解と混乱、制御と逸脱、感情と物質といった、相反する性質が同居し、それゆえ奇妙さ、違和感や異物感を感じさせるのではないか。そこにはモノゴトの新しいあり方を探るためのユニークな道程が存在するとともに、思い通りにいかないことをむしろ貴志は楽しんでいるようにも見える。
貴志真生也 (Maoya Kishi)
1986年生まれ、2009年京都市立芸術大学美術学部美術学科彫刻専攻卒業。
主な展示として「Osaka Directory2, 貴志真生也」(2022年、大阪中之島美術館、大阪)、「豊饒なるもの-現代美術 in 豊川」(2015年、豊川市桜ヶ丘ミュージアム、愛知)、「リアル・ジャパネスク」(2012年、国立国際美術館、大阪)
コレクション
国立国際美術館
高橋龍太郎コレクション